まだ私が小さかった頃、ちょうど日本の高度成長期が終焉を迎えた頃の話です。
幼少の頃の私は家の中でお絵描きしたりブロック遊びばかりしてるような子供でした。
そんな私を心配したのかある夏の日の夜、母は私を家の正面の田んぼに連れ出しました。
そこには何かが暗闇で光っては消える、初めて見る光景が広がっていました。
ホタルです。
北国の短い夏を謳歌するかのように飛び交うそれは余りにも幻想的で、物知らずの私には信じられない世界でした。
母は虫網と牛乳瓶を取りに家に戻って、私に差し出しました。
小さな私でもそれを取るのは容易く、採ったホタルを僅かな水と雑草と共に牛乳瓶に入れ家に持ち帰り枕元に置いて満足気に眺めながら眠りにつきました。
しかし、翌日目を覚ますとホタル達は皆、牛乳瓶の底で裏返って死んでいました。
大事な玩具が壊れた時のように私は悲しくなり、今度こそはとまたホタルを採りに行くようになりました。
結果は同じで、子供ながらに小さな命を育む自然の偉大さに感服し、ホタルを採る事は諦めました。
To be Continued 》